全剣連合同稽古2/2
昨日は10時間ぐらい寝た。 手術やら何やらで疲れが出て早く寝たのだ。 朝はスッキリと目覚め、昼は布団で30分間午後の手術の手順を考えながら瞑想。 午後の手術の出来栄えは完璧。 入れ歯の処置も終わり、帰ろうと思ったら時間も頃合いだった。 稽古に武道館へ向かう。 原田源次先生は始まりの礼をされ、温かい控室へ行かれる。 そこで先生は正座をされ15分間待たれる。 先生にとっては剣道以上の修業の様に見える。 その後道場に出られ、元立ちに立。 西村は15分過ぎから面をつけて原田源次先生を待つ。 数人が「先生は誰に並ばれているの?」と聞きながら西村の後ろに並ぶ。 直ぐ後ろにKさんが並んだ。
今日の西村は原田源次先生との稽古に全く気負いが無い。 先生の攻め足と同じ調子で出て行く。 途中スーッと体を出すが、手元の引き金は先生に任せる。 先生の竹刀が先に胴へ回ろうとする瞬間、心が勝手に面を打った。 これは決して蹴り出したのではない。 井桁崩しの対角線の伸びる力を使って、このベクトルの先に竹刀があるのだ。 最後のもう一本はこの面が入った。 今日は二本ほどタイミングの良い面が打てた。 打てたと言うよりは、打っていた! 稽古の中ほどで、手元をあげて打って行くと見事に斬られる。 ふと我に返り心を静かにする。 そうすると、最後の二本は身体が勝手に打っていた! 先生との稽古でこんなに素直な面が出たのは久しぶりだ。 全くと言うほど剣道の稽古をしていない。 しかし、筋肉を使わない剣道をすれば、勝手に身体が動くのが分かった。 武術的身体動作が段々分かってきた。 先生の良い引き出しで、剣道の微妙なところが分かって来たような気がする。
送っていく車の中で。 原田先生 「Kが懸かって来た。 今日は辛抱が良かった、よく我慢をしていた。 良かった!」 (Kさん:若手七段でもダントツのスピードと感性を持っている。 教士八段も彼にかかると苦しい稽古になる。 彼の長所は素晴らしいもので誰もが褒める動きと打ちがある。 西村が前々から惜しいと思っていたのは、足と手が一つではじける様に打つことだ。 足、体を進めて攻め、相手の心が動いた時を打てば良いのにと思っていた。 はじける動きは、相手には完全に返されてしまうからだ。 今日は直ぐ前で西村が原田源次先生と稽古をしているのを、目の当たりで見ていた。 以外に西村の竹刀が先生の面に届くのを見て、何かに気がついたのだろう。 いつもは、先生が攻めは入る瞬間に、負けじとばかりに打って出ていた。 そこを我慢をしたのだろう。 剣道はこうして進歩するものなのだ。) 西村 「彼は今日、目の前で西村が先生と稽古をするのを見て何かを感じたんでしょう。 手元の上がりの我慢をしていたのでしょう。 この欠点が無くなると、しっとりと強い剣道になりでしょう。」 原田先生 「うん!」
後は誰と稽古をしたいとの気持ちもなかった。
たまたま、K君が久しぶりに相手に来た。 武道館へ着いた時、彼は竹刀を二本持って素振りをしていた。 重い竹刀、木刀を持って素振りをする時に気をつけなければならないことがある。 ほとんどの人がそうだが、肩の三角筋を使うためにヒジが外に開いてしまう。 彼もそうだった。 注意をしてあげたいなあと思っていたところだ。 肩に力が入り気合いが入り、西村の右足に誘われすっ飛んでくる。 しかし、これが早いのだ! 見事な位に早いのだ。 見てから相面は乗られてしまう。 胴に返すのは簡単だが、面に行くと相打ちになってしまう。 180センチ以上の上背で、この瞬発力とスピードにはほとんどの七段も打たれるだろう。 西村の足の誘いを誘いにしないで、間を盗む方向に仕向けた。 彼が一瞬前に出る機会が無いのだ。 彼が気がつき打って出た時は、既に遅く西村の竹刀が面をとらえていた。 『誘いと、間を盗むは少し違う』この間を盗みながら攻め込む名人が原田源次先生なのだ。 『誘いは 月影だ』『盗み攻め入るは、我が身を捨てて静かに間合いに入っていく』 彼には『間を盗む』で面をとった。 『月影』を使えば、簡単に胴に返せるが、、面に乗るには相手の勘とスピードがあり過ぎる。 この様な使い分けも必要だ。 最後の方は胴に返して取る。 そして、上から斬り落として面をとって終わりにする。 暫く見ない内に剣道が洗練されて来ていた。 次の段も近いだろう。
最後に『雨ちゃん』のお友達が来られた。 なかなかしっかりした構えだ! 姿勢も気合いもよろしい! ただ、彼は西村に心の中を全て見通されている。 打って出た瞬間に全て西村に面をとられた。 途中、少し試して見た。 彼が色を見せる前に面に出ると相面になって入らなかった。 彼はなかなかの使い手なのだ。 しかし、身体の動作、特に予備動作で西村に合図をしながら打ってくる。 こんなにやりやすい相手はいない。 『雨ちゃん』彼に伝えて上げてください。
彼は攻め入りの形になるとき、身体が前傾になる。 この前傾がある角度を超すと、もう打つしかない。 西村はそこをずーっと右足を浮かしながら合わせながら入っている。 相手に同調しているのだ。 彼はそのことに気がつかない。 次に無意識が打つと決めた瞬間、頭を一度前に出し下げるのだ。 これは、面打ちの祭に使う頚反射の予備動作なのだ。 頚反射は頭を起し、後ろに反るとその質量の当量だけ竹刀の振り降ろしと前進にエネルギーが転換出来るからだ。 これは誰しも無意識れべるで、本能として知っている。 なるほど面は打ちやすい。 しかし、相手との関係性で勝負が決まるのだ。 彼の有意識が決定する前に、無意識が打つと正体を出したのだから、そこを西村に取られる。 西村はこの瞬間、井桁崩しで体を菱形に伸ばして、右足を床にトンと落としその力で面を打つ。 このようにして100%面を打たれてしまう。 『雨ちゃん』よろしくお伝えください。 『ここで頭の先から腰までを真っすぐに背筋の緊張を緩めないことだと。』 合図が見え過ぎる事を教えてあげて下さい。 『雨ちゃんの場合、以前は時々腰が折れていた。』 あるレベルまでは、西村にこのように全てを読まれてしまう。 そこで、稽古相手が減ってしまうのだが。
『井桁崩し』 これは足を支点に体をけり出して進めるのではない。 身体の腰の奥底の上下の動きの中立点・丹田辺りを中心に、身体の上と下とを伸ばすのだ。 井桁が(四角)がへしゃがり、菱形になり、一つの対角線が長くなる。 この長くなるベクトルを使い相手を倒すのが武術的身体動作なのだ。 剣道はこのベクトルの先に竹刀をおけば同じ原理だ。 ・・・・岡田さん・・そうでしょう! 原田源次先生の稽古風景は実にそれを表していますよねえ! 蹴り足で体が前に出るわけではない。 身体がずずーっと伸びるのだ! 原田源次先生は足を蹴って打ってません。 身体が伸びて打っている。 支点を、回転を使った動きはここをつけ込まれる。 ある武道家の発見は正に真なり!
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