久々に良い稽古・剣道を観た!
元立ちは強い元プロの8段、懸かるは小柄な華奢な7段。 私はこの7段の先生を高く評価していた。 打つところが実に上手いからだ。 千代田の稽古ではこの先生くらいしかいない。
さてこの先生8段相手に何処まで出来るかに興味があった。 全体としてみるとやはり8段の方が強い。 しかし、ここで評価したい点は肚の出来具合だ。 この7段は8段相手に全く位を落とさない事だ。 両者は位では全く五分なのだ。 8段は竹刀を少し上げ、相手を脅す様にして、相手が怯んだところを面に打つパターンが多い。 8段このパターンで面を打つがこの7段は見事にサラーッと胴に斬りとる。 これが4回位あった。 更に脅しにかかる竹刀の先をあげ攻め入ろうとする瞬間、出小手に斬って出る。 見事に3本くらい入った。 要は相手の責め口は相手を脅し、怯えた心を面に取る方法だ。 これは柳生流の【活人剣】(相手を活かしてとる、相手を働かせて取る)とは逆の、 【殺人剣(さつにんけん)】(相手の竹刀を殺す、相手を居着かせる、相手を怯えさす)なのだ。 剣道の中〜高段者初期の剣道に多いタイプの剣道だ。 【活人剣】は相手が打てると錯覚させて出て来るところを取る、相手が打たざるを得ない様に追い込んで打つて来たところを打つ。 要は相手の心を手の平に乗せて捌く剣道だ----これが高段者の剣道なのだ。 この八段は勝負勝負の世界で剣道をして、【殺人剣】が身に付き今だ【活人剣】の心には至っていないのだと思う。 剣道はお強いですが、もう一つ上手い剣道とは感じない。 一方、この7段は位を落とさないから、相手の脅しをサラーと受け流し、その瞬間、脅しにかかり手元が上がった時は小手に斬り、無理して打って来た時は軽く胴に見事に捌く-------要は位を落としていないところに尽きる。
かって東西対抗戦の副将、大将を勤めた範士八段は【殺人剣】の攻め口だった。 西村を脅しにかかって打とうとする瞬間を、西村にことごとく小手に、小手面に取られた。 稽古後、君は八段に受かるよと言って下さった。 西村7段に受かった翌年の事だった。---随分昔の事だ! 剣道で言えば圧倒的に私より強いのであろうが、西村は位を落とさない、肚があるからこれが出来るのだ。 脅しにかかる余分な動作の起こりを斬って取るのだ。 この稽古はビデオに撮っていたので、範士八段、警視庁主席師範の佐藤博信先生に観てもらって、絶賛された! 長々と書いたが剣道は詰まるところ、心の成長、肚が出来る事、不動心を超えた不動智の理解と実戦にあるのだ。 このレベルに来るとすでに【速さでは無く、早さの勝負】スピードではなく、機会の早さの腕前になる。 私は原田源次範士8段との40年を超える稽古でこれを学んだ! でも、本当のところ別枠の心の修行でこれを学んだと言った方が真実かもしれない。
ちなみにこの7段が不用意に打つと8段に斬り落とされたり、竹刀の先で中心をとられてしまったりしていた。 相打ちでは5,5と4,5くらいの差で8段に分があった事を追記しておく。
本当に剣道らしい剣道を観て、嬉しくなってしまった!1!!!。 この二人の稽古の質の高さを並んでみている人はどのくらい理解が出来たであろうか?
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