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- 自分だけが知らぬ癖・知らぬが仏 - 西村雅興 [2008年1月25日(金)]



自分だけが知らぬ癖・知らぬが仏
西村雅興
2008年1月25日(金)
自分だけが知らぬ癖・知らぬが仏

『面を打ちに行くとき』ほとんどの方は癖が出ます。

かなり腕が上がって、六段七段になっても自分のその癖を知らずに面を打っている人が多いものです。
自分から打って出るとき、竹刀の先を一度下に軽く落とす人です。
打って出るのに竹刀の先で拍子を取る人です。
なるほど竹刀で拍子を取れば打ちやすいです。
相手が格下ならば攻めの強さ、速さで十分に入ります。
あるいはそれが幸いして、相手に居つきを誘います。
もし、この人が西村にかかると、見事に突きか胴を取られます。
相手は打つと合図をしたのだから、真っすぐ出て突きを決める。
面を来るのが判っているから、面を返して胴を打てば良い。
ともかく、こちらに合図をして打ってくる人は来る人は御しやすい。

では、何故竹刀の先が下がるか。
それは自分から攻め込み、自分で打って出るからである。
だから、自分が動きやすい様に拍子をつけてしまう。
しかし、この癖は本人だけが知らない。
この癖を持ちながら六・七段にまで来た自分の自信があるから、まさかそんな癖があるとは露にも思わない。

この同じ人が、全く刃が立たない先生との稽古では、丁度逆をやってしまう。
右肩を入れ、右手で竹刀を引き上げ頭を出す。
先生にその瞬間面を打たれてしまう。
負けずに頑張り対応する気、打ち気が強過ぎるから屈筋が反応してしまう。

同じ人が全く逆の打ちをするから面白い。
竹刀を下げるときは、攻め込み打つ余裕が自分の拍子を作ってしまう。
右手で引き上げるのは、心に余裕が無く、何が何でも速く打とうとする余裕のなさが、打ち気と連動した右手の引き上げ(三角筋、上腕二頭筋を使い、ヒジを外に出しながら竹刀を引き上げる)になってしまう。

判っていても、西村も原田源次先生との稽古では、つい右手を使ってしまい小手を取られることが多い。(西村の心に余裕が無い時)
相手の面が見えてしまうと、つい反応が早い屈筋に頼ってしまう。

さて、我の強い人。
相手の頭を叩きに行く人。
何でも自分で決定しないと気が済まない人。
グッと攻め、面を打ちに行く人。
大人になって筋力がついてから剣道を始めた人。

要は竹刀をもって相手と対峙したときに心の余裕の無い人です。
ともかく相手より早く竹刀の先を相手の面を当てたい人です。
自分が面打ちを意識した瞬間、右手の屈筋が働いてしまいます。
六段の昇段のレベルで苦労をする人です。
勢い込んで受験をして、その意気込みの強さが足を引っ張ります。
落ち続け、あるときチョット足を故障し、『まあ!申し込みもしたし、受けるだけ受けてみようか。』と軽い気持で受験をすると、足の故障が意気込みを抑え、意外に相手が見えて受かってしまうことが多いです。

剣道が難しいのは、高段者になれば、稽古をしたから上達するとは限らないのです。
『心法』の修業が大切になってきます。

さて、六段は右手の力がぬけ、腰が入った面で打ち勝った人が受かります。
七段は打ち勝ってきた同士の相手です。
相手を引き出し、捌いた人が受かります。
七段が難しいのは、より一層心の差が立ち会いに出ることを要求されるからです。

原田源次先生の言葉
「手は勝手に動くわなあ!、足はそうは行かない。」
足は打つ前に捨てて斬り間に入ってゆく勇気と決断です。
自分の意志でやることです。
手は相手の動きに応じて無意識が勝手に動かす。

多くの人は面を打ちに行くことから迷路に入っています。
攻め込めば相手が反応し、面を打ってくださいと差し出します。
そこを、反射的に無意識が勝手に打つのです。
有意識が働いていませんから、右手に力が入りません。
要は足腰体からの攻めは入り、相手が反応すればその時点で勝負有りです。

十分に体の運用が有り、いつでも手が打てる体勢で攻め入っている時に、そこから体の動きを始める相手は全く間に合わないと云うことです。

原田源次先生は攻めっぱなしです。
ズルズルと攻めは入り、相手が反応をした瞬間に右足をトンと落とし、その勢いで面を打ちます。
このズルズルとした先生の攻めは入りに、我慢が出来ずに心が動いた瞬間面を取られます。
この時の反応が素晴らしく早く、面を取ったと思うぐらいに打てた時は、抜き胴を取られます。
西村は先生に見事な抜き胴を取られたとき、西村の快心の面打ちを打った時です。

面打ちは攻め勝った瞬間、相手が面を打てとこちらの引き金を引くのです。
その瞬間、無意識は面に出ているのです。
だから右手は引き手になりません。



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