結局、極意の極めとなると同じ動きの様です。 79歳の師匠・原田源次先生が八段七人を含め25人と一時間半思うがままに稽古が出きるのは、自然な動きの連続だからでしょう。 最近、師匠のビデオを何度も見ています。 スローで見たり、一コマ送りで見ると、重力を使い自然に体を押しだしている。 そして、その動きの中の急緩の節目が無い。 一方相手は足から攻め入るが、打とうとする瞬間に溜めを作ってしまっている。 これをスローで見ると、前方移動の一瞬の停止状態なのだ。 この一瞬に先生は間を盗み入り込んでしまっている。 この動きを見ると、体の動きの節目は心の変化の節目に相当する。
相手の無意識の打ち気・攻め気に呼応して先に体を進めはじめます。 相手の有意識が本格的に攻め気に入った時、これは起されたことになります。 相手が引きだされた状態で、心も体も先生の手の平に乗ります。 この合気が掛かった状態で、相手が無駄な思い、無駄な動きをするために先生の打ちが入ってしまっています。
師匠の体の動きそのものを見ると、初動負荷理論そのものです。 師匠の初動をビデオで見ていると、上体が前に倒れ込むような動きが見えます。 体の重心が前に倒れ込めば、姿勢の建て直しに反射的に動作が起きる。 意識がなくても体の反射が自然にそうする。 これは二足歩行の原理そのもので、体重が前に掛かり倒れそうになった瞬間、後ろ足が軽く体を押す。 これが二足歩行の原理で、筋肉を最少で体重移動する法則です。 重心移動に伴い体が倒れるのを防ぐ程度に筋肉が働く。 『相手の無意識の打ち気・攻め気に呼応して先に体を進めはじめます。』 これで『心と体の先』をとったことになります。
この倒れ込みに秘伝があります。 体を前に倒そうとするには、前足の位置よりかなり前に上体を持っていかないと、前足より後ろにある質量がバランスをとって邪魔をします。 構も姿勢もそのままで、滑落が始まり、倒れ込みが始まります。 相手が色を見せたら、この倒れ込みを防ぐ程度に後ろ足が体を押しだせば良いのです。 この後ろ足の押し出しと竹刀の動きが連動して、相手を打つことになります。 体を立て直す程度に後ろ足が体を押しだしたら、面を打ってしまっていた。 こんな感じです。
一方、相手は引きだされたことを意識がのなく、自分で攻め込んだつもりです。 足が攻め入った、竹刀を引き上げた、後ろ足が蹴り足になって竹刀を振り降ろした。 一つ一つに意識があり、体は意識につられ時間差を持ちながら動き、意識・動作の節に溜めがある。
師匠の動きは長い「ひとーーーつ」の一拍子。 相手は動きは短い「いち、にいい、さん」と多くの拍子を持つ。
師匠は日本体育専門学校の剣道科出身で、体育の専門家です。 砲丸投げ、やり投げ、等多くの種目で国体で良い成績も上げています。 身体運用のプロなのでしょう。
先日、師匠からこんな話しを聞きました。 「俺は体育の教師だった。 スタートを教えるには、後ろから軽く押したら前に転がる(ここで反射が起こる)くらいの感覚を教えるのだよ。」 末續選手のスタートはまさにそうです。 初動負荷理論のスタートそのものです。
剣道もその他の武道も結局は同じだと思いました。
参考までに次の書き込みを入れておきます。 (胃ガンで胃を取り、胆嚢も摘出し、心臓は手術が不可能でいつ止まってもおかしくない79歳の先生です。 今の体は胃が無い関係でやせ細り、風が吹けば飛んでしまいそうな感じです。) 『原田源次語録その12 岩崎敬郎 [HomePage] [Mail] 3月1日(月) 先週の土曜日は原田先生のお供で(半ば強制) 埼玉に行ってまいりました。 とっても疲れました。 原田先生が講師で行われた柳生の中堅指導者講習会の 同窓会が埼玉県警察学校で行われたからです。 柳生の講習会の29期生の集まりで 二九柳会(ふくりゅうかい)と称しています。 総勢約25名の稽古会でした。 主に関東以北からお集まりでした。 岩崎は柳生の講習会に原田先生から行けと4回ほど言われたのですが 講習会は6月の中旬に5日間の日程で行われるために 参加できませんでした。 ですから今回は原田先生の荷物もちです。 「あのなぁ、1回の講習会の講習生からこんなに八段が生まれることは まれだぞ。随分熱心な奴らが集まった講習会だった。」 二戸を朝の9時の新幹線で大宮に11時30分に到着。 2時から稽古。 岩崎は比較的人より面をつけるのが早いのですが、 岩崎より早く面をつけた先生がいます。 そしてすかさず原田先生の前に並びました。 東京・警視庁の渡辺先生です。 範士ですよ。岩崎はびっくりしましたね。 やはり、心構えが違うなぁと感心しました。 さあ、それから1時間20分。 我が師匠は次から次にかかってくる先生方をさばきました。 見ていてオーバーペースにならなければいいなと思いながら。 鮮やかにすり抜ける。 ぴたと押さえる。 ストンと面を打つ。 せめる。攻める。誘う。動かす。 まるで「水を得た魚」と言いますが「剣道をする原田」です。 岩崎は夜の懇親会には出席しませんでした。 岩崎はサラリーマン時代に大宮に住んでいたので 大宮の剣道友達がてぐすね引いて稽古を待っていたので 夜7時からまた1時間30分、大宮武道館で約20人を相手に 稽古でした。 翌日岩崎の方が早く二戸に戻ったので夕方ついた原田先生を駅まで おで迎えしました。その車の中で 「あのなぁ、抜かれると判っていながら面を打ってくる。 抜かれまいとするのではなく、抜かれてもいいから、 抜かれないように攻めて打つ機会を作って面を打ってくる。 あいつらはすごいよ。 打つところを見つければ、崩して打とうすればいつでもどこでも 打てるのにそれをやらない。 俺に胴を抜かれることをわかりつつ、 それでもなおかつ面を打つ。 あいつらはすごいよ。」 「あのなぁ、懇親会も盛り上がってな。 お前のことを言っていたよ。 強いって。 それでおれは言ってやったんだよ。 あいつは強すぎるから駄目なんだって。 わかるか。 判ったら2次も受かる。 今のままだと1次どまり。」 岩崎は考え込んでしまいました。 だって今まで強いなんて言われてことがないからです。 師匠が強すぎるから駄目って言ったことは 俺って強いんだ。 でも駄目なんだ。 どうすればいいの。 悩んだ夜でした。」 』
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