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- お手紙と入れ歯の治療 - 西村雅興 [2002年8月23日(金)]



お手紙と入れ歯の治療
西村雅興 [HomePage] [Mail]
2002年8月23日(金)
先生の本「本当に良い入れ歯のつくりかた」を読ませていただきました。
この先生こそ、私の求めていた歯医者さんだとうれしい悲鳴をあげました。私は昭和十五年生れ、あと三ヶ月で六十歳になる主婦ですが、三十代より歯周病が始まり、四十代で一本一本と抜いておりました。
今から五年前、娘の結婚式の後で突然歯くきが痛くなり何も噛めなくなってしまいました。
近所の歯医者さんでかなり多くの歯を抜き、義歯を作りましたが、痛くて物をかむどころではありませんでした。
一ヶ月以上調整いたしましたがらちがあがらず、先生の試行錯誤やなあと言われる始末。
友人に紹介してもらった別の歯医者さんに変わりましたが、抜いた所に歯の根っこが残っており、膿がたまっておりました。
結局ここで下の歯を全部と上の歯1/3を抜いてしまい、入れ歯を作っていただきました。
この先生はじっくり調整して下さり痛みは無くなりましたが、物をかみくだく力はほとんどありません。
痛く無いのが何よりとあきらめて、やわらかい物ばかりを食して現在に至っております。

子供達も独立し、夫婦で旅行なんかもよく行くのですが、何しろ私が肉類や硬い物はいっさいダメときているので、主人に文句ばかり言われ、口惜しい思いをしております。
先生の本を読み、どうしても今治療しておかななければ、私のこれからの人生が台無しになるとかんじました。
東京まで治療に通うのは大変な事だと思うのですが、幸い姉が横浜に住んでおりますので、そこから通院すれば何のとかなるのではと考えています。
費用の方も主人が出してやると言ってくれますので、この際がんばってみようと決心しました。。
私も主婦なのですが、少しばかり仕事を持っておりまして、月に二度ほど皆さんにパッチワークを教えております。
私を慕って下さる生徒さん達にあまり長い間ご迷惑をかける事も出来ませんので、とりあえず七月八月の二ヶ月間まとめて休みたいと考えております。
治療にどれだけ時間がかかるかは、診察していただかないとわからないと思うのですが、七月八月にゆっくり治療していただくとしたら、いつ頃、ご相談に行けば良いでしょうか。
費用の点でも大まかにどれぐらいかかかるか、ツルーティッシュと呼ばれるハイテク入れ歯はいくらぐらいするもなのか、教えていただけないでしょうか。
それなりの準備が出来ないと伺う事が出来ませんので、お返事がいただければありがたく思っています。
先生が姫路の出身の方であることも、私にとってはうれしい要素の一つです。
是非治療に行きたいと思います。
よろしくお願い申し上げます。


この患者様はお手紙を頂いたときその住所を見て驚いた。
私の実家の直そば、姉様方の家も100メートル離れていないぐらいに近い。
入れ歯は難しいもので、一年に三人ぐらいどうやっても上手くいかない患者様に出会う。
兵庫の姫路から来られるこの患者様が上手くいかなかたら、姉様方に迷惑がかかると思いドキッとした。
お手紙の内容、次の奇麗さ、文章をもう一度眺めた。
そこからは上手くいくと思った。

患者様が実際に来られお顔を拝見して、これは困った!と思った。
上顎に比べ下あごが小さく、後ろに下がった顔貌だったからだ。
この顔の方はほとんど間違い無く難症例なのだ。
顔貌と性格的はかなり一致し、几帳面な人、気難しい人であることも難しい原因の一つなのだ。

しかし、お話をしていくとお手紙から受けた感じと全く同じで、お言葉も品の良が良く、良いうちの上品な奥さんと云うことが判った。
全体から受ける感じから、構えた西村の心も緩み治療に入っていった。
構造的には非常に難しく、逃げ出したい程の悪条件ながら、彼女の優れた正確がそれを上回る好条件を筋肉の緩みとして与えていた。
姫路からきっちりと来られ、上京の度にお友達に会い治療に来ながら、旧友との再会を楽しまれる方でああった。
回を重ねる毎に良くなり、最終の本義歯が入った時は「全く昔の顔に戻りました。」と大喜びされました。
入れ歯が入ったら娘さんのいるサンフランシスコに行きたいと言っておられた。
入れ歯が終了して間もなく、無事娘さんの所へ行き、そこで美味しいものを一杯食べられたとのお手紙を頂きました。
検診はしっかり来られます。
そして、その入れ歯は調整がほとんど必要が無いぐらいに、しっかりと彼女の命を支えています。

今回、顔貌、顎の状態、上顎と下顎のバランス等から見て、間違いなく難症例と思うべきはずが、全く問題なくスムーズに進んだ。
これはこの方の心の柔らかさ、心の穏やかさ、それに私はここで入れ歯を入れると云う明確な意識が有ったからこそと思う。
何事も一番上に立つ重要な事は『心』だと思った。
今回はつくづくそう思った。

入れ歯が完成するたびにいつも技工士さんと話しをする。
「結局の所、患者様の人柄を越えた入れ歯は作れないなあ!
あの人柄だからこそ、あそこまでの完成度の高い工芸品が出来たのだなあ!素晴らしい人柄、生き方、意識の持ち主に出会ったなあ!
あの人柄のお蔭で、素晴らしい仕事をさせて頂いたなあ!」
これが決り文句だ!



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