先生の質問は西村も悩んだ内容でした。 そのレベルに達して初めて悩む事です。 先生の若さでこの悩みの達したと言う事は珍しい事です。 自分で道場を持ち、日夜剣道に励んでいるからでしょう。 でも、どんなに多く稽古をしてもなかなかここには来れません。 歯科医としての経営の試練を乗り越えて行く過程での心の成長があるからでしょう。 「人は裏切る者だ!しかし、あえてそこを乗り越えて経営をし、指導をしていく過程での修羅場をくぐってきたからでしょう。」 着替えながらの短い会話から感じとれました。
さて、あの胴は西村の無意識が打った胴です。 捌くような余裕のある胴ではありませんでした。 体が通り抜けた時、胴を打っていた自分に気がつきました。 先生の見事な面に、西村の無意識の危機管理能力が反射的に身を守っていたのです。 捌く意識があれば面を見せて胴に返したと思います。 その意識は全くなく、先生の凄まじい面の偉力・スピードが、西村の『無想剣』へと導いてくれたのです。
西村の正中の攻めを先生の無意識が知っていました。 先生の無意識が正面突破をわずかに右に避けた。 真っすぐ正中の攻めの中に西村はいました。 あそこで、先生が面を打ってくるとは予想だにしていなかった。 結局、西村の無意識は身を守ったのです。 長年の稽古が身を守りながら、胴を斬っていただけです。 無意識レベルでの稽古が出来る相手はなかなかいないです。
先生の将来が楽しみです。 全日本覇者との試合でも引けを取らなかったあの試合をみて、西村は先生の剣道を見直したのです。 これは凄い!と。 後は、意識の押し合い、位の稽古を八段クラスと『練り上げれば』花が開くと思います。 相手の心が見えてきます! 剣道の面白さはここにあります。
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