日本語で書くと比較的説明しやすいので、』お言葉に甘えて日本語で書きます。
【タメ・溜】
剣道でいう【タメ・溜】の西村的解釈。
一例をあげます。 二足歩行の原理で説明します。 二足歩行では手と足とが左右逆に出て全体としてのバランスをとっています。 最初は両足を平行において直立します。 体を軽く傾けると重心が身体の中心からから前に移動します。 すると右足を軽く前に出し次の重心が右足に移動する準備をします。 手は足の反対側が前に出て身体の左右の均衡を保ちます。 そして、後ろ足になった方が軽く蹴り重心を右足に乗せます。 次は右足に体重を乗せて入る状態で、左足が右足の横を抜けて右足の前に出てきます。 この時、右手は左足に協調して前に出ます。 左足が右足を越えて前に出ると、重心は右足の位置より前に出ます。 この動作の繰り返しが二足歩行の身体的に平衡がとれた動きです。 普通は軽く何も感じることなくこの動作を繰り返しが続きます。
今、一足一刀の間合い(触刃の間合い)から、ゆっくりと重心を前に滑り出します。 この時の初動は左足の力を使わずに重心が前に滑り落ちる力を使って前進します。 次に体が落ちないように左足の後筋(お尻から大腿部の背面の緊張)によって体を進めます。 重心の滑落とこの後筋の緊張のバランスを使って、右足がゆっくり滑り出します。 これが体を使った、体の押し出しの攻めです。 歩行ならば右足の出ると同時に左手も前に出ます。 剣道初心者は右足の動きと同時に左手が動きます。 相手から見れば、身体のの前進と同時に左手が動くから、打ちにきたとはっきり判ります。 相手が一足一刀の間合いから前に少しでも進んだ時点で、手元をあげてくれればこちらには好都合です。 手元の動き方が判れば対応は易しいです。 打つ事を合図し、どこを狙っているかを教えているのと同じだからです。 一足一刀から体を進め、斬り間に入り込みます。 この入り込みでは右足は既に前に出ています、しかし左の拳を動かさないとしたら出たい左半身に、身体のねじれのエネルギーが蓄えられます。 相手は敵が前進してきたから対応したいと思うが、どこを打ってくるかは判らない状態です。 負けじと右足を出しながら左拳を動かして打とうとします。 この瞬間に既に左半身に蓄えられた、左手が前に出ようエネルギーを解放してやるのです。 無理をさせていた身体は均衡を取ろうとして、爆発的な力で左拳を前に押し出します。 これが凄まじいエネルギーを持った速い面になるのです。 [滑走路から飛び立つ飛行機と船のカタパルト(ゴム叉はバネ、蒸気の力で押し出す装置)から飛び出す飛行機の違いに似ています。]
身体を弓と思ってください。 弦を十分に引き絞って今まさに的を打たんとする状況にしている最中に、相手がそこから弦を引こうとしている状態に似ています。 相手が弦を引こうとしたとき(相手が打とうと思った”う”)の時に、手を離せば矢は飛びます。 いつでも打てるエネルギーを蓄えた状況で、打つチャンス、打つべきところを相手が見せた瞬間まで待ってい状態を「タメ」といいます。 剣道はこの左拳を先に動かした方が負けです。 昔から「先に打って出た方が負け」と決まっていると言われています。
身体的には「懸かり」体が先に懸かっている状態で、刀と心は「待」そのチャンスを待っている状態。 これを「体は懸かりで心は待」「懸かりの中に待がある」
蛇がぐっとからだをしならせて立ち上がった時、下2/3は前に弓のように出しながら、状態の1/3は頭はぐっと後方へ引きつけ飛び出すチャンスを狙っている様な状態です。
【タメ】とは身体も心も打つ状態(銃口をしっかり照準を合わせ引き金に指がかかり静かにひき絞っている状態)に十分でありながら、その引き金の最後は相手に引かせる状態を待っている。
これが一瞬の状況下で行うから難しい。 だからこそ、その後の動きは反射的な動きが要求される。 『剣道は一瞬の我慢比べ』・・・原田先生の言葉です。 この一瞬の我慢が勝負を決める。 原田先生との稽古では十分我慢したつもりでも、やはり西村の方が一瞬早く手元を動かし、そこを取られている。
西村の課題はいかに先に原田先生の手元を動かすかということにある。 最近やっとその方法を発見し、時々効果が上がっている頃です。 相手の手元を動かせると言う事は、相手の心を動かし打ちに入ってしまう状態を作ることです。 この状態を作った時、後は竹刀を動かしてそれの確認作業をするだけです。 自分の竹刀を動かす前に既に勝負はついている。 これを『勝って打つ』という。
まとめると 心を引き止め、身体のエネルギーを引き止め、次の一瞬を待っている状態をいいます。 この一瞬は誰が決めるか? 相手が決める! 相手が打たれに出てくる瞬間は、追い込まれた相手の我慢が切れた時です。
剣道は技量が進むほど「心」のウエイトが段々重くなって来ます。 「心、技、体」一番上位に立つのは「心」です。 初心者の段階では「体」がものを言います。 中級者の段階では「技」がものを言います。 上級者にになると「心」がほとんどで、身体は勝手に動き、技は反射的に出ます。 一番難しいのは「捨て所」の決断です。 これはその人の人生そのものと関連するので、剣道の稽古だけで身に付くものではありません。 剣道の限りない難しさと面白さは「最後は自分を知るための心の旅」をしているからです。
蛇と蛙 蛇の前に蛙が一匹いる。 蛇は蛙が動く瞬間に、その動きを見定めて飛びかかる。 蛙が動かない前に飛びかかると、蛙はその攻撃を避けて逃げてしまう。 蛙は動かなければ蛇は飛びかからない。
日本の諺 「キジも鳴かずば打たれもしない。」 やぶにひっそり静かに座っておれば、猟師に打たれことはない。 ほとんどは自分から正体を出して餌食になってしまうのが常なのだ。
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