ある女性剣士への助言
剣道は小手も胴も突きもある!!!! ある高段者が剣道は『面一本』で進め!!! 面さえ打てれば、後は打てる!! なるほどそれも一理ある!
今のややスポーツ的、剣道的、身体動作を習得する為には足腰を鍛え、大きな動作の面打の稽古が最重要課題です。 少しレベルが上がってくると、剣道は身体能力よりも相手との関係性の優位差、読みの優位差、心の優位差が重要になってくる事がわかります。
相手との関係性に重点を置くと、体を捨てて前に出て相手が面に出てくるところを(引き出して)面に取る。 これが出来るには剣道の腕前が相当近いか、上でないと難しい。 大柄な強い剣道家に小柄な女性が面を打とうと思うと、例え上手く引き出してもかなり無理がある。 相手が七分前に出て、自分が三分前に出て打ち合いが決するとなると、自分には倍以上の時間的、身体動作をする余裕が有る。 相手を引き出しても同じ位前に出るとその余裕が消えてしまう。 面に出る場合は引き出して上から乗るのです。 小手を打つのは素早く体をいれて、小さく打つのです。 胴を打つ場合はあまり前に出ないで、相手の体の伸び切った状態で、サラリと返し胴を打つのです。 要は体の捌きが重要です。 相手の大きな強い動作に、『心の目』を閉じなければ案外簡単に出来ます。 前に出過ぎると押し込まれてしまいます。 自分を捨てて前に出る・・・これが重要です。 二本面を打たせて、立ち筋を読めば・・・次は見事に胴に斬れる。 剣道の稽古で力強い男性とひ弱な女性が体格、体力、速さで勝負をする事は無理が有ります。 駆け引き、捨てて前に出る勇気、相手を読み動作を起こす、体の捌き等で工夫を凝らせば、かなり肉迫できると思います。 西村と久しぶりに稽古をした男性は素晴らしい上達ぶりでした。 身体能力においても彼の方が数段上です。 しかし、右足から静かに間を詰めいつでも打てる状態で、相手を引き出せば、やはり相打ちの動きの様ですが見事に西村の面が決まります。 同じ様な場面でも相手の感性が高く面が相打ちになると本能が感じると、胴を返して取っています。
カナダのクリちゃんはこれが上手く小手を取ります。 ゼッケンが以前と違って、日本の人のなので気がつきませんでしたが、この小手を打たれた瞬間『お!クリちゃんだ!』と気がつきました。 それも見事に打たれたのです。
剣道で一番難しいのは捨てて前に出る勇気と決断です。 これさえ出来れば相手の心は手の平に乗る。 見事に打たれて相手を読むのも稽古です。 次回、裏を取れば良いのです。 同格の相手には面で対応致しましょう。 感性ですが結構良い線にあると西村は判断しています。
さて、京都での事ですが、石原九段と若手で日本一と言われる先生の稽古で、若い方が先生の何処にも竹刀を触る事すら出来なかった稽古を見ました。 小柄な女性ほどの石原先生に、西川先生がこの様な状態だった時、剣道の本質が何処に有るのかと思いました。 このとき、西川先生に「全く歯が立たないね!」と声をかけると、「一本ぐらい触れない!」と言っていました。 西村は西川先生のこの素直な言葉が出る人柄が好きなんです!
かって、武道館で年越し稽古に言ったことが有ります。 西村も意気盛んな頃で五段を取ったときでした(32年前)が、柳に風と受け流され、ポコンと打たれていました。 全く相手にされていませんでした。 相手の先生は小柄な女性ほどの体格でした。 小沢丘範師九段、日本剣道連盟の会長でした。 稽古の後、「あなたは何の仕事をしているのかね?」と聞かれました。 「歯医者です。」ち答えると、「歯医者にしては良い腕前だ!」と褒められたことが有ります。
石原先生、小沢先生、両範師とも小柄な女性ほどの体格です。
剣道は相手と何処の次元で対峙するかで、関係性が変わって来ます。 歯科医の只の剣道好きが『心』で対峙すると、高名な範師に引けを取らない稽古が出来ます。 竹刀の当てるところに意識を置くと、赤子の手をひねる様にやられます。 打ち合いに行くと全く歯が立たない。 しかし、『心』で対峙し、『位を落とさない』とそれなりの稽古が出来ます。
師匠の教えを探求して行くと『心』『智』に行き着きます。 師匠、原田先生と初めて竹刀を交えて、28歳の時から63歳までの35年後の先日やっと恩返しが出来ました。 西村の小手面がしっかり決まった瞬間、先生の口から「参った!」の一言を聞きました。
それでもそれは裏が有り、三日前に軽い食当たりにあい、胃が無い先生の体力、気力が極端に落ちていたことが後でわかりました。 先生の『心に気力が無かった!』からでした。 随分前ですが、先生に面が二本は入り有頂天になったことがあります。 その時は、前日奥さんが緊急入院され、稽古当日の朝に病院へ見舞いに行った足で上京された日でした。 先生の『心』は、盛岡の奥さんの病室にあったのです。 先生の『心が虚』であれば、西村でも面が見事に二本入ったのです。
二回ともそれは後で知ったことですが、先生と西村の剣道の関係性にしっかりと結果が出ています。 前日、西村が主幹で母の納骨を京都で行い、兄弟で食事をして大きな満足感に浸った翌朝のことです。 今までで初めて先生に面が入ったのです。 後で、「あの面は良かった!」と褒められました。 前日のことがあり、先生以上に西村の気力が充実してみなぎっていたからでしょう。
段位に関係なく、自分はどのレベルと次元で剣道をするか見定めながら、方向性を持って稽古をするのが大切かと思います。
|
|