全剣連合同稽古6/10
「貯蓄十両 儲け百両 見切千両 無欲万両」
今日は体調万全、心身ともに覚醒状態。 朝、妻に言われた「パパ!昨日は良く寝ていたわね、今日は万全ね。 いつもは原田先生との稽古前はソワソワして寝つけないのにね。」 午後は患者様は一人としていた。 意気揚々と武道館に行く。
大先生方の控室にいくと、長堀範士が着替えの最中だった。 御歳85歳、化け物だ! かくしゃくとした江戸っ子だ。 足には湿布薬を塗られていた。 用心の良い事だ。 奥の方には原田先生の道具が置いてあった。 今日は来られている事を確認した。 しばらくすると、野正範士が入って来られた。 これまた、長堀先生の上いく。 肌はツヤツヤ、おそらく染めているとは思うが黒々フサフサとした髪の毛。 髪の毛のすごく薄い西村には羨ましい限りだ。 そう言えば、永松範士もそうなのだ。 見事に若々しい野正範士だ。
その後、原田先生が入って来られた。 大病を重ねたせいか一番老人ぽさを感じずにはいられなかた。 そう感じたのは、先生の今日の体調のせいらしい。 右足の親指を中心に赤く腫れ上がっていた。 通風とのことで、菅先生に痛み止めを頂いて上京したとのことだった。
長堀先生が「今は痩せているが昔は原田先生も西村君ぐらいあった。」と言われた。 その少し後、森島先生が入ってこられた。
西村が「先生、今日の稽古は始めからですか。」と聞くと、「5人ぐらいがいいとこかなあ!」と言われた。
控室を出て着替えにいく途中、望月先生と息子さんに出会った。 お父さんの体形とは全く正反対のスラリとした180センチはゆうに越える立派な体格、その上ハンサムだ。 今日が武道館デビューとのことだ。
稽古が始まり一番手は金山さんだった。 相変わらず切れ味の良い面を打っていた。 甘い面を打つと先生か返して胴を打つ。 良い面が出た時、先生は見事に胴を抜く。 これが見ていてはっきり判る。 先生に抜き胴を打たれた時、先生は「良し!」と言われる。 西村は5番手だったが、先生の調子から見ると5人くらいと思った。 それで、7番手の望月先生の息子さんと順番を入れ代わってあげた。 案の定5番手が終わった後、先生の方から「今日はこれまでと。」と言われた。 後ろの先生方には、今日は原田先生の体調が良くないと説明をしてお引き取り願った。
さて困った!どの八段の先生にもお願いしたいとの気が全く起きないのだ。 体調は万全だし、誰かと稽古をすれば良さそうなのだが、全くその気が起きない。 一番端で、最近八段になった長身の先生の稽古を見た。 ともかく面は速い! ところが打つ前の味が全く無い。 ある七段の先生との稽古では打ちあぐねていた。 最後に、八段の方が「先生一本お願いします。」と言った。 八段は面を打ったが胴に返された。 参りましたと言ったが、七段の先生はまだ不十分でしたといい、もう一本になった。 今度は八段良いところを打つが、残念ながら技前がないからしっかり小手を打たれていた。 七段の先生はいつも同じ道場で稽古をされている先生だ。 八段を目指す古株七段なのだ。 西村はこの先生には十二分に分があるのだ。 この八段の稽古を見ていた時、あそこは突きが入ってしまう、あそこは小手だ、あそこは胴だ・・・と、稽古をしなくても予測が立つ。 チョットやってみようかと思ったが、これは大人げない!俺の方が強い証明をしたがっている自分に気がついた。 さもしい根性で稽古をしても後で自分が惨めになるだけだ。 後味が悪い思いがする・・・と思い面を脱いだ。 ある面打ちで有名な若手の先生と稽古をと思ったがやはり止めた。
八段殺しの異名も余り良い評判ではない。 八段になっておればこんな異名はつかない。 といって、八段をとりにく気持が起きない。 その為に大切なエネルギーを使おうとは思わない。 欲が消えた!
一時125人の大型歯医者から、来月からは歯科医は西村一人の小型の歯科医院になる。 自然に任せていたが、やっと縮小が完成する。 これで、いつでも歯科医をやめれる用意が出来た。 ここから、ただ楽しく歯科医療をする。 食べて行ければそれで良い! 剣道も同じ思いの中にある。 ただ楽しく剣道をやっていく。 楽しければそれで良い!
「貯蓄十両 儲け百両 見切千両 無欲万両」という言葉がある。 ずいぶん昔、自己啓発の修業中に聞いた言葉だ。 今になってこの時の教えが生きているとしみじみと感じる。
経営規模最高の時・・・儲け百両 二院を閉鎖した時、さらに次に50坪の規模を25坪にした時・・・見切千両 最近の経営形態・・・無欲万両 仕事も剣道も無欲万両に近い心境になっている。
仕事は西村を必要としている人のみに治療をする。 剣道はただ楽しくやっていく。 この欲の無い人の面を打つのは難しい。
剣道究極の極意! 「打つと思えば悟られる! 打たれたくないと思えば隙が出来る! 相手が打ちたいと言えば、身を捧げる『棒身』! 何も思わなければ、相手の心はこちらに映る! 手詰まり気つまりになったら、身を捧げて相手に問う! 打つぞ!突くぞ!と十分に攻めて意識を高めあい、 後は相手の刃の中に身を捨て問う! その後、体は勝手に反射の行動をとり、不思議の勝ちとなる『神妙剣・無想剣』。 この気位があれば、相手が範士たれとも恐るに足らず。 極意は心法・肚にあり。 よって、『不動智』こそが全てとなる。」
こんなことを書きながら、言いながら明日は心が揺れるかもしれない西村です。
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