全剣連合同稽古会6/9
武道館に着く。 駐車場に入れる前に佐藤博信範師に出会った。 西村、車越しに先生に言った。 「先生!賀来先生との京都の立ち会いは良かったですね! 先生の本に書かれている通りの動きでしたね! 触刃の間からもう一つ入る!ですね。 さすがの賀来先生の手元も浮きましたね! その後の面も同じですね! しかし、賀来先生もさるもの、同じ手で先生を攻め小手を取りましたね。 剣道の醍醐味・真髄はここですね。 ここで自分を捨ててサーッと入る。 先生の本の通りでした。」 佐藤範師が言った。 「あれは楽しかった!」
着替えていると、新八段の林先生が言った、 「原田先生に何とか真面を打ちたいのだ。」と言っていた。 西村が言った。 「先生、面を打とうと思ったら面は入りませんよ。 剣道は小手も胴もありますよ。 面を打とうと思ったらそれは相手に伝わっていますから。」
控え室へ行くと、原田先生は顔色も良くお元気だった。 金山さんが見事に打ち取られていた。 彼が言った「全く刃が立たなかった!」 見ていたら先生の体の攻めに即座に反応して打ってしまっていた。 いつもより打急ぎの感があた。 先生にお願いするは剛の者ばかり。 先生は軽快に捌かれていた。 6番手の西村の番の時、前に出て来られて「息苦しいくなったと言われた。」 先生私の前で終わりましょうと言ったら、いや次の浅野までやると言われた。 さて、蹲踞から立つと先生は息をするのがやっとのようだ。 先生が体を入れて進まれるも、西村の左手は動かない。 先生でも技の前に気力が先んじるのだろう。 先生の気力が弱いと西村の心が波立たない。 先生の体の入りに合わせ面の動きを発すると、先生は素早く手元を返して小手か胴へ変化を見せようとする。 すると、西村は先生の小手を押さえて面に渡ると入る。 しっかりと、軽いのが数本有った。 試しに先生の入り身に捨てて入ると、見事に捌かれた。 結局は『智』が働くところまで相手を見ていることが肝要なのだと思った。 その後、数本の面の引き立て打ち込みをしていただいた。 最後の一本が腰が入った面を打てたので、蹲踞となった。
その後、浅野先生がが終わった後、新八段の林先生がお願いしていた。 見事な面を打ち、見事な小手と胴を斬られていた。 先生、チョット過ぎたかなと心配したがだ丈夫だった。
あれ!佐藤範師の顔が無い。 道場の右手の壁に座って稽古の様子を眺めていた。 少し顔がむくんでいたせいなのかと心配した。 帰り道場を出たところで先生に会った。 君にあったあと、少しめまいがしたので稽古を控えたそうだ。 先生が言った。 「原田先生の稽古ぶりをじっくり見たよ! 全く無駄な動きが無いよ! 見事だよ!」
車中、原田先生が言った。 「森島先生と話をしていた。 『合わせるのが上手いね!』と褒められた。 剣道は合わせるしかないものなあ!」
そういえば、福岡高校での初稽古の時、原田先生の次に元に立たれていた先生に、西村が言われた。 「あなたは合わせるのが上手いね!」 弟子は師匠に似た剣風になるのだろうと、ふーっと思った。
関根新七段が原田先生にお願いしていた。 たいしたものだ、原田先生の攻めを見て、先生の剣を捌き面を打っていた。 不十分な面だったが、先生の後から剣を動かしたことを評価したい。 肚のある稽古だった。 さらに、剣を動かす機会が素晴らしく良かった。 後は面を打った時の手の位置がもう少し下がれば、手の内が斬り手になってもっと冴えのある面になるだろうと思った。
原田先生と稽古をすると誰にもお願いする気がない。 手持ち無沙汰だ。 終わり頃、小柄な女性剣士がお願いしますと言った。 武道館へわざわざ来るだけのことはある。 しっかりとした構えで見事な打をする。 しかし、西村の妖剣にかかると引き出され、誘われ全て打ち取られてしまう。 本人も不思議そうにしていた。 何をしたか・・・ 十分合気になったところで、面を見せながらスーッと体を入れる。 面に来たとことを、右胴、左胴と軽く捌く。 十分合気になり彼女がまさに打たんと心が動く、その一瞬前に、西村の足がスーッと体を入れる・・右足が滑りながら前進。 彼女は半拍子遅れて面に打つと動く。 その瞬間、西村は右足を落とし面に斬る。 百発百中なのだ。 彼女が遅いんですかと聞いた。 そうではない、私が右足から体を進めているところに、あなたが打ちに入ってくる。 半拍子、四コマ漫画の一こま私が先に動いている。 足を見せて説明をすると、合点がいった様だった。
珍しく岩手の先生が来られていた。 相当な腕前で体の動き竹刀の動きも冴えていた。 惜しいかな!もう少し剣道の本質を知っておればと思って眺めていた。 車中、原田先生が言った。 「岩手から稽古に来ていたのがいる。 退職をしたから剣道をやる?退職をして剣道をやる?チョット定かではない。 なかなか良いのだが、打つ前がないので少し教えておいた。 目を輝かせて『良いことを教わりました!』と言っていた。 あれの息子は〜高校の大将をしていて、体が大きくて西村君ぐらいある、上段を使っている。」
剣道は結局、合わせるしかない。・・・原田先生 触刃の間合いからスッと体を入れながら、相手の動きに合わせて打つ、ここしかないのだ。 『触刃の間合いからスッと体を入れる。』高段者の剣道(佐藤博信著) 結局は打つ前に死ぬ! 後は『智』に任せる! 剣道も人生も『極意』ここに尽きる!・・・・と西村は思うのだ。
武道館での稽古を見ても、意地の張り合い、打ち合い、叩き合い、フェンシング様剣道のオンパレードだ。
|
|