人間の感性の鋭さ!
随分前の話だが。 佐藤博信先生の腕の痛みを、故障を治していた時のことだった。 佐藤博信先生が 「田村という素晴らしい感性の高い強い選手がいる。 しかし、怪我や故障が多いのが欠点なのだ。 先生、一度診てもらえるかね。」 直ぐに彼がやって来た。 左上段の名手らしい。 握力を測ると極端に左右差がある。 西村は彼の怪我、故障を少なくするには体の左右差を少なくすることなのだ。 彼の指でオーリングテストをしてみた。 彼は体の向きを変えるだけで極端に握力が変わった。 地磁気の方向性すら敏感に感じ取る体なのだ。 感じ取るというか、影響を受ける鋭い感性の体の持ち主なのだ。 おそらく本人はお気づきでないと思う。 さて、彼は左上段だ! 直ぐ翌月には全日本選手権予選を控えている! 左右差を少なくする調整をするべきかどうか悩んだ! 結局、噛み合わせの調整はしなかった。 西村は彼に言った。 「八段を中段で受ける時には、左右の偏りを治した方が良いですよ。 怪我や故障が少なくなると思います。 しかし、本職の大試合前に調整するにはあまりにリスクが高い。 バランスは取れるが、左の握力がやや弱くなるから、今は出来ない。 選手の時期が過ぎたらまたお出で下さい。」 彼はそのとき剣道一本の人生を選んだことが良かったどうか悩んでいたようだ。 高卒がほとんどの警視庁で大卒だと聞いた様な気がする。 後で聞いた話だが、全日本選手権では転んだらしい。 その後気にはしていたが、来院されることは無かった。 八段になり、剣道家の道を選んだのは正解だったかもしれない。
さて、彼は神様が与えた天性の感性の持ち主なのだ。 その恵まれた感性を職業で生かしたから成功なのだ。 この辺りの話は、努力では追いつかない話なのだ。 多かれ少なかれ誰もが持っている感性なのだが、人により天と地ほどの差があるのだ。
六段までは普通の人でも、努力と師に恵まれれば、同年齢で強いものが先に受かってしまうから、努力次第では順番待ちで受かると思う。 腰の入った大きな、突き抜ける面をひたすら打ち込み稽古をすることだ。 しかし、多くは手を使った竹刀当て稽古に終始し、なかなか受からない。 田村先生の様な感性が無くても努力が実を結ぶ段位なのだ。 しかし、この努力の陰で奥さんが怒っていないか?仕事をおろそかにしていないか?・・・・・ この様な人はなかなか受からない。 六段を受けさせてくれる奥さんに感謝の念を持ったとき、がむしゃらに昇段を目指さなくなったとき、・・・不思議に相手が観得て受かることが多いのだ。 やっとこ六段の才能の人が合格の実を結ぶ時は、努力の上にさらに『大きな心の変化』が起きた時に受かっている。
今回のポイント ・感性の高さは計り知れなく鋭い人もいる(田村先生)。 このレベルの人は全日本級から八段、プロを目指してもその甲斐はある。 ・この次のレベルの人は、最高の師に出会う努力をすること、やや長い年 月を懸けること、心安らかな品の良い剣道への道を歩むこと。 ・その次のレベルの人は剣道の質を考え、剣道を良く知ることに心がけ、 相手を引き出して取れれば七段になれる。 ただし、七段は良くも悪くも個性が強い必要がある。 ・この感性の鈍い人、努力、師、心の三つが備わる必要がある。 そうすると、やっとこ六段になれる。
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