『剣道は不思議なもので、どんなに早く動いても西村先生をはじめ上の先生の手のひらで転がされてしまいます。』
何故?? そうなんです!剣道が他のスポーツと違うのはここなんです。!
心技体と言いますが、身体能力の優劣、鍛錬が最初に来て、次に技から理合になって行きます。 技のところで人間の生理的機能が十分に発揮されれば終了です。 これは人間科学の世界です。 ◎目で見て脳が判断をして筋肉に指令をして体が動き始めるに は0,2秒かかります。 脊髄反射は100分の1の瞬時に反応します。 相手に先を懸けると相手は0,2秒で反応します。 こちらは100分の1の反応ですから200倍早く反応が出来るのです。 ◎体重を動かすのにはどこかに支点を置いて、そこを基点に筋肉で押し出します。 ここで重要なのは慣性の法則です。 停止しているものを動かすには、初動に大きな力が必要です。 一瞬に動かそうとするとその速さに比例して大きな負荷がかかります。 足の前後の中央に重心を置いていると、動き出す時には後ろ足に重心をかける必要が有ります。 これを重心のキャチボールと言います。 一度体の重さを後ろに向け、そこから又前に出すのは相当なロスです。 剣道の初心者は何時もこの動きをしながら、右足を出して前進しています。 日常生活ではこのような動きは致しません。 重心が中央からさらに前へ移動して、倒れそうになる前に後ろ足を軽く蹴ります。 ここには停止が無く、重心は動き始めているので慣性の法則は 既に破られています。 これを動かすにはわずかな力で動きます。 多くの人は慣性の法則に逆らって前に出ようとします。 剣道では体重を後ろ足に乗せようとする瞬間に入られます。 判り難いので例をあげまあす。 転けかけた人を転がすには簡単です、チョット押すだけで転んでしまします。 剣道も人間の二足歩行の原理で動きます。 生理的に最も無駄の無い動きをしています。
多くの剣道家はこの初動に体を前後にユスリ、体が前に出て来る動きを利用して、慣性の動きを破り、反動をつけて前進して面を打ちます。 打たせてもらっている場合は、これで上手く行きます。 しかし、相手からすれば打って来るのは見え見えです。 簡単に小手か胴に捌かれます。 打つと合図をして打って、打たせてくれる相手はいません。
初動は前足の膝をわずかに緩めると、体は倒れかかります。 腰当たり、丹田当たりの重心は前下方へ落ちかかります。 この時、慣性の法則は全く筋肉の力を使う事なく破られます。
ほとんどの剣道家の犯している大きな間違いは、後ろ足で蹴る事、筋肉の緊張を初動に使っています。 西村の動きは先ず膝を抜き、倒れかかる初動を使います。 筋肉の弛みから初動が始まります。 対峙している相手には、この筋肉の緊張の一瞬を見破られます。 だから、相手に合図をして打つみたいで、簡単に捌かれます。 西村の動きは筋肉の弛みがスタートですから察知されない。 さらに動き始めているものを動かすのだから力は最小ですむ。 ただし、足幅が広いと前に倒れてしまい、打つしかなくなるので、足幅狭くし、後ろ足が押し出すまでの時間的余裕を稼ぎます。 西村に面を打たれた人は気がつくと先生が目の前に居る。 風が吹いた様に面を打たれると言います。
まだまだ有りますがこれが技です。 武道的身体動作を身につける事が、『身体能力の優劣、鍛錬』の後に来ます。 現実的には武道的身体動作を使って剣道をしている人は少ないし、これを何十年かけてほんの少し身に付けているだけです。 武術は『重力の応用に尽きる』としっかり、肝の命じて練習すれば、他の人の十倍速く上手く強くなれます。
この辺りを少しずつ手ほどき致します。
永松先生に指導した面返し胴のところでも、詳しく説明しています。 過去ログで『重心の滑落』で検索すると、相当な量の話が載っています。
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