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- 先を取るとは - 西村雅興 [2018年8月15日(水)]



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先を取るとは
西村雅興
2018年8月15日(水)
先を取るとは
久しぶりに再度【先】について書いてみる!
過去記事のロゴ検索を見ると膨大な量が書いてあるから参照のこと。
初診に戻ったつもりで考えて下さい。

剣道では古来より打に出た方が負けと言われている。

相手を打とうとするにはそれなりの理由があります。
打ち出すには打とうと決断をする切っ掛けがあります。

一番解りやすいのは,
相手のフェイントに思わず遅れ無い様に打ち出してしまう時です。
打ち出す切っ掛けを相手に作られたのです。
要は心を操作されてしまったのです。
こちらはフェイントに乗ってしまった相手を,容易に仕留める事が出来ます。
打ち出した相手は一つの動作が完結しないと,次の動作に移れないのです。
フェイントによって相手は手の内をさらけ出してしまったからです。
相手を思わず打たせてしまう切っ掛けを作る事を先を取ると言います。
先を取るには自分に心のゆとりが必要です。

打った相手は自分の自発的決心により打って出たと思っていますが,打つと云う決心を相手に誘導されたとはゆめゆめ思っていません。
だから,勝てない相手には全く刃が立たないのです。
相手の仕掛け(先)られた自分に気がつかない内は,簡単に捌かれてしまいます。

明らかな大きなフェイントの時は打った後【やられた!】と気づきます。
剣道はお互いに打ち出すチャンスを狙っています。
これがほとんどです。
西村は違います!
打ち出すチャンスを自ら作るのです。
相手に今こそ打つチャンスだと錯覚させように仕向けます。
相手が打たざるを得ない様にしかけるのです。
相手の心が打てると錯覚するようにしかけるのです。
要するに【打つぞ!!と予備動作を見せて】相手に反応させるのです。
相手の無意識が打つと決断をして,体が反応するには少し時間がかかります。
ピストルの音を聞いて,脳が筋肉にダッシュしろと命じて反応するのに0,2秒かかります。
剣道では先を懸けた方が,この0,2秒のタイムラグの間に相手に来所する事が出来るのです。
剣道において0,2秒はとてつもない長い時間です。
剣道で一瞬の様に感じる時間も,先を懸けた方から見れば,相手の動きはスローモーションの様なものです。
さて,・・・・
この予備動作がだんだん小さくなって来ると,見物人には見えません。
高段者の試合,立ち合いが面白くないのはこの微妙な所がみえないからです。
当事者は全身全霊を懸けて,細い紐の様な線でピリピリと感じ合っているのです。
この状態では仕掛けた方が勝ちです。
身を捨てて刃の下に身を置く勇気が,相手を動かすのです。
【手は勝手に動く和なあ!足はそうわ行かない!】原田語録の重要事項
最後は捨てる勇気ですから竹刀を振っているだけではここに行着かない。
剣道の難しさはここに有ります。

色んな先の取り方が有ります。
小出しに数種の小さな先を懸け,相手の反応を見ます。
相手の驚・懼・疑・惑のどの部分に強く反応するかを見極めるのです。
この途中に相手の心が手の平に乗って来ます。
後はどう仕上げるかはこちらの勝手です。
手の平の心をヒョイッと投げ上げ,パッと掴むだけです。
後は捨てる決断だけです。
この作業がない決断の打はただの蛮勇です。
剣道は相手の心をお手玉にする作業です。
この時点で勝負有りです。
形のある色(先)が次第に微妙なものになって来るのが高段者の攻め合いです。
空間の気の応酬になってきます。
お互いの気を大きな風船の押し合いとすると解りやすいでしょう。
風船の接触点は硬い面としましょう。
チョッと強く気を入れ,腰を入れます・・・相手は負けじと押し返します。
この瞬間,フーと気を抜きます。
押して気の壁が暖簾の様に手応えの無い物に変わると・・・オッットと前に気が抜けて来ます。
相手は思わず打って出て来ます。
これを緩める先と西村は呼んでいます。
高等な先のかけかたです。
来るのが分っている人を捌くのは容易な事です。

このように相手が思わず打ってしまう状態へ誘導するのが剣道の極意です。
明治村の決勝戦,奥園先生の対戦相手は出小手の得意なのは十分知っています。
でも!面に出て小手を取られます・・・それも見事に斬られます。
横から見れば自殺に等しい面打です。
何で!打ってしまったのか?大きな疑問がのこりました。
西村はビデオを買って検証しました。
心のやりとりは目に見えません。
しかし,心の微妙な変化も体には出ているはずです。
この体の変化が微妙で一瞬ならば肉眼には捉えられません。
このシーンを一時間見続けました。
それもかなりスローで!
分りました・・・・奥園先生はギリギリの間合いをさらに追い込んでいるのです。
相手も我慢の限界を超えようとしています。
おそらく!奥園先生は心で相手に「苦しいだろう!打っておいで!」合図を送るのです。
一瞬気を緩めるのです。
相手は暖簾に腕押しの様に,苦しい心を解放するかの様に思わず無意識が打って出てしまうのです。
先生の「打っておいで!」お気のサインは体に出てるはずと検証しました。
奥園先生の左足の踵が1p下がっていたのです,
誰も気がつかない,おそらく先生自身もお気づきではないと思います。
先生の心の合図は踵を下げ,体が微妙に後ろに下がったのです。
相手の潜在意識はこれを捉え打つべきと決定したのです。
頭が判断をしないで,無意識レベルで反応したので止め様がありません。
頭は打って出てはダメ!と思っています・・・出小手の名人とは百も承知しているのですから。
でも!思わず引っかかってしまいます。
剣道はこのように相手の心(陰カゲ)を動かす作業です。
柳生新陰流の「陰」の意味はここに有ります。
相手を活かして仕留める(活かすは相手の心を動かす意味です)
詳しくはロゴ検索で【新陰流】を見て下さい。
相当詳しく書いてあります。
柳生流の極意は
・相手が打って来たところを打つ。
・相手が打って来なければ、隙を見せて打って来るところをとる。
必ず相手を引き出して、相手が何をするかをもお極めて取ってます。

山岡鉄州は蓋を取ってみないと、中身は分らない。
先ず蓋を取る、先を懸けて相手の正体を確認して取る。

京都の稽古で西村と岩手の先生(六段)との稽古をある若い女性が見ていた。
目がパチクリして、信じられないという表情だった。
二人の稽古が申し合わせ稽古の様に思ったのだ。
女性で京都大会に来ているのは六段錬士という事だ。
女子の全国大会にも出場している様だ。

翌年、西村に挑んで来た。
昨年、自分が見た様に、申し合わせ稽古のように捌かれてしまった。
無理もない、彼女の心は西村の手の平出ころがされ、猫じゃらし状態だった。
稽古の後、申し合わせ稽古でない事を納得した。
武道は一枚違うと大人と子供の様だと昔からいわれる。
後で、他の女性との稽古を見たが、見事に強い女性だった。
レスをつける



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