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- 未発と起発 - 西村雅興 [2006年1月16日(月)]



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未発と起発
西村雅興 [HomePage] [Mail]
2006年1月16日(月)
事理相忘
P16
『段々身体が衰えてきだすと届かなくなってきますから、届かないところをどうしたら打てるか。
剣道は相手が前に出るところと下がるところ以外には打てない。
原田源次先生が皆様に指導された時に、前へ出た、下がった、そこを打てといわれましたけれども、そこは未発と起発。
要するに技が起こるところと起こる前のところを打たなきゃならないのです。
相手が前に出て次に下がる鼻を打たないと自分の打突が有効打突になりません。
打たれた者が本当に打たれたら、打たれる時に心の余裕があったならば心まで打ったことにはなりませんので打つ方は、下がる鼻を打つことです』

原田源次先生が『相手の出て来る鼻を打て。』と言われているのを良く聞いたことがあります。
先日、武道館控室での西村の質問に

『右足を滑らせて攻め入る。
重心は真ん中に置く。
相手の色が見えたら足をトンと置くと同時に面を打つ。』
原田先生と稽古をされた人はこの面の感覚で打たれた思いがあるでしょう。
目の前で実際にやってみせてくれました。
なるほど!とガッテンが行きました。
西村の頭の中ではやや左足(後ろ足)に重心を乗せながら、右足を滑らせていたような気がします。
先生の場合は相手の出頭(鼻)を足でトン(ドン)、竹刀でピッシと打つのです。
西村の場合は全く同じ事をしていた様ですが、重心の位置が真ん中よりやや後ろなので、
トンと打つ前に左足が一度蹴り足になり、そこからトンと足を着いている。
原田先生より一動作増えています。
原田源次先生先生は流れるように前に出て、足幅の中央に重心を置き、相手の合図に対し『石火の機』で面を打っていた。
西村の場合、このチャンスに左の蹴り足が必要だった。
左足に床を蹴る支点を一度求めている。
原田先生の場合は『井桁崩し』の要領で、体を伸ばしているから支点が無い。
これだと『石火の機』で面が出る。
西村の場合、左足に支点を求めに行った瞬間、空間的に一瞬の停止状態がおき、ほんの少し間が空く。

『未発と起発』
この未発は段位が違えば簡単に分かります。
しかし、それが何なのかという説明がないから闇の世界に入ってしまう。
人が意識を持てば、必ず身体はそれに反応している。

有意識が面を打とうと思うと、起発が見える。
大人になって剣道を始めら人の特徴ちして、右手の上腕二頭筋の緊張だ。
竹刀で打とうと決めた瞬間、すかさずこの筋肉が竹刀を持ち上げようとする。
屈筋は意識と瞬時に反応する。
剣道・武術の基本稽古は伸筋の始動の筋肉連動の教え込みなのだ。
この稽古が身についていないと、相手に読まれ勝てないのだ。
だって!!相手に合図をして打つのだから。

無意識が面を打とうとすると、未発が見える。
かって、賀来先生に見事な小手を何本も打たれた。
足も手元も全く動いていない。
しかし、行くぞ!と、スーッとわずか5センチ程腰の位置が前に出た瞬間だった。
この瞬間、先生の剣先は西村の小手をとらえていた。
これは京都大会でも範士八段の先生が同じように打たれていた。
西村がスッと腰を出したのも、賀来先生の攻め(未発の動き)に起されて、負けじと気当たりしたような気がする。
こんな話だと闇の世界に入ってしまう・・・ので、西村流の説明。
無意識が面を打つと決めると、
友意識が起発する為の予備動作が体内の奥から既に起こり始めている。
それは腰の備えであったり、やや重心を沈め床をつかみ蹴る準備をするとか、小胸を出して胸を開き、両肩を後ろに引き、肩甲骨を引き、後は肩を前に出せば、竹刀を押し上げる準備をしている。
右足の膝は緩み重心が既に前方に緩く滑落し始めている。
この予備動作は一瞬に起こるのではなく、起発へとつながる一連の筋肉の連動なのだ。
それは腰の中央の丹田付近から発せられる。
大きな動きに備え姿勢維持とそこから上下に発せられて動きとなるからだ。
この動きの始まりが『静止』からの動きならば瞬時にそれは行えるし、『停止』状態からだと、この一瞬に静止の状態、ニュウトラルに戻す必要がある。
身体に適度な緊張感の中、いつでも動ける状態を『静止状態』という。
左かかとがベッタと床に着いた状態(右足の場合が多いが)は身体の動的緊張状態が抜け、姿勢維持のみの平衡感覚的な筋肉となっている。
西村がよく言うのだが『身体が休めをしている!』
これは左手元の状態にも言える。

車で例に上げる・・・オートマチック
車を完全に停止するときは、ギアーの位置はどこでしょう。(停止)
静止状態の時はニュートラル(中立状態)
未発の状態はドライブにシフトしているが、ブレーキに足を乗せている状態。(静止)
エンジンを噴かせているがブレーキで車を止めている。
相手からすれば、エンジンの音が気になる、いつ来るかもしれないからだ。
上級者はこの状態で攻めながら溜めを作り、相手が打てと信号を発するのを待っている。
この状態は相手からするといつ向かってくるか気が気でない雰囲気を感じる。
我慢しきれずに打って死にに行ってしまう。
ブレーキを足から外せば、アクセルを踏まなくても、ズルズルと車は前に出る。
中級者は既にズルズルと前にうごめいているのに気がつかない。
そこを、上級者の相手に起される。
アクセルを踏めば急発進する・・・起発となる。
初心者はシフトは停止の所に置いてある。
停止、中立、静止、アクセルの段階を踏むから相手からすれば見え見えだ。
さらに進み名人の原田源次先生になると。
車は坂道をゆっくり動き始めながら前進をしている。
エンジンを噴かしているわけでもない、軽くブレーキに足を乗せてコントロールしている状態だ。
エンジンを噴かしていると、車を止めるより前から逃げてしまう。
坂の下の人間はどうしょうと一瞬ためらう。
相手が無謀と知らずに車を止めにかかると、先生はブレーキから足を外す。
この瞬間がトンと床を踏む瞬間だ。
相手は車にぶつかる・・・ここが面だ。
相手が車を止めにかかる・・・これが合図だ。
相手が逃げにかかる・・・これが下がる鼻を打つ。
しかし、相手が静かに引かれる覚悟で待つとき、いつブレーキを外せば良いか、アクセルを踏めば良いか迷う。
相手に接近したとき、ひき殺す!と思った瞬間、相手はピョンと牛若丸の様にボンネットに飛び乗った。
相手の方が各が上なのだ。
ひき殺すと思った瞬間、相手はサッと身をかわした。
胴を抜かれた状態だ。
相手は軽く車に手を当て、その力を利用し身をかわした。
返し胴の決まりだ。
相手の方が各が上だ。

昨年の京都で原田源次先生もお相手に攻めあぐねた。
相手の不動心が原田源次先生の攻めを静かに見ていた。
なかなかのお相手であった様だ。
レスをつける



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