五年ぶりに来院院された御夫人。 御主人の病気、その後右足が冷えてしまい、右側を下にかがんで寝るしか出来ない状態が続き、歩くのもおぼつかなかった。 体調、精神的に鬱状態が続き義歯の検診にも来る事が出来なかった。 今回は残存歯が破折し、痛みが強いので何とか来院された。 痛みは抜歯をすると直ぐに消え、入歯の問題が解決し大変喜ばれた。 その後数回義歯の調整をしていった。 ある時受付のポスターを見て、「プラセンタを注射すると体調が良くなるのでか?」と聞かれた。 「通常の腕の注射より、ツボ注射のほうが劇的に効果が判りますよ!」と言ったら希望された。 右の足の山陰交、と足の三里にプラセンタのツボ注射をした。 彼女が言った「あれ!不思議、足も肩も凄く軽くなった!」 狐に摘まれた様な顔をされていた。
西村的には右足、右肩凝りの原因ははっきりとしている。 しかし、積極的には自分からアプローチはしない事にしている。 この様な症状は顔を見ただけで、顎の動きを見ただけで、咬合審査をしただけで、ほぼ100%的確に診断が出来、症状の軽減が出来る。 40年をこの方面の治療をしていると、神業のように治療が出来るのだ。 昔は積極的に治療をしていたのだが、あるときから気がついた。 親切のつもりが、押し売りの治療に受け止められる患者様の気持ちに気がついた。 以後、本人がこの症状が辛い、何とか治して欲しいと切実な訴えがないと手を付けない事にして来た。 西村が十分に咬合審査をすればほぼ100%の人が治療の対象者になってしまう。 しかし、切実に治療を希望するのは数%にしかすぎない。 残りの人に手をつけると、費用の問題、処置の問題、回数の問題などから、否定的な反応が出ることが多分にある。 この場合、御節介をしたことになる。
さて、この女性の場合最初から顎は後方へ落ち込んでいた。 体調的に自覚症状はないので、顎関節の改善はしていない。 下顎に2本インプラントを植え、インプラント併用義歯にて完成した。 この顎の状態でも、インプラント併用義歯にすればOKなのだ。 吐き気が強かったので、上顎の入歯の奥はえぐって嘔吐反射を避けた。 幸い犬歯相当部位に歯が有ったので、これが幸いした。 入歯的にはほぼ満足いく状態で終わった。
それから5年後の話である。 義歯の調整と抜歯で入歯の具合は良くなった。 プラセンタを希望されたのでツボ注射をしたら劇的に症状は消えた。 しかし、プラセンタが効いたので、根本治療にはなっていない。 そこで少し御節介かもしれないが症状を十分に聞き、その対症治療を十分に説明をした。 いわゆる「猫の背伸ばし療法」『顆頭域最大化療法』の説明を過去の症例から説明をした。 すると、是非やって欲しいとの希望があった。 ある処置をすると、その場で右肩が軽くなり、右足の痛みが消失した。 首も左右に十分曲がる様になり、大喜びだ! その後、咬合口径を少し上げ、舌小帯の処置をして、咬合調整をすると下顎がやや前に出て来た。 当然だが右瞼の下がりが無くなり、目が大きくなった。 顔が右に偏った顔だったがシンメトリーになった。 症状の消失に加え、顔まで美人を取り戻したので、大喜びだ。
さて、西村が不親切なのか?本人が希望していないのか?お金が惜しいのか? 多くの場合-----お金が惜しい!、そこまでしたくない!がほとんどだ。
それでも、親切と思い、どうすれば良くなるかと説明をしても「ただなら!やる!」がほとんどだ。 普通の人間は残念ながらこんなものなのだ。
良い医療の実戦はなかなか難しい! 今回、プラセンタの話が出たので、本気で説明をし、ワラにもすがる思いで治療を受けられた。 「主人も相応の費用を出すから、治療を受けなさいと言ってくれました!」
西村には十分に治せる自信が有る。 このご夫婦は仲が良く、御主人がお金を出す事を良としたした。 本人の切なる願い、御主人の心が一致したので、治療を依頼された。
西村側には医学的に治療の準備は十分に有る。 患者様側の総合的準備が有れば−−−−−医療が成立する。
前にある医療雑誌に書いた事がある。 一般的には医療側の充実とかその他の要素を要求しているが、 『本物の医療の実戦は、実は患者様側の総合的準備の充実にかかっている!』 と西村は断言した。 この御夫人は素直な性格、立派なご主人に恵まれていたので、今回、西村の治療を受ける事が出来た。 本当に良い症例だとおもう。 このような運を掴む人が少ない現実は寂しいものである。
多くの場合「保険でお願いします。」「年金生活ですから。「もう歳ですから。」 自分に負担がかかるのであれば見合わせます、との否定的反応がほとんどなのだ。
この治療の成功の秘訣は、『良い御主人に恵まれた事!』ここに尽きる。
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