デンタル・ヒーリング
今日、御主人が奥様を連れて来られた。 先日、当院の先生が調整したのだが、右上の第一大臼歯が痛くて仕方がないとの事だ。 先生曰く「オープン・バイト(開口)で噛みあわせが複雑だとの事だ。 西村は自分の診療時間が終わって帰ろうとしていたが、御主人の悲壮な顔を見ると無下にはできなかった。
診察してみると開口であり、顎が右にシフトし、大臼歯の頬側咬頭が中に入り込んでいた。 一番問題は過去に口が開かなくなるほどの顎関節の痛みを、何度も経験し、完全の関節の前方への動きがロックされた状態であった。
まず最初に、顎が左に自分の意識では動かない位の咬みあわせになっていたので、咬合調整で動くようにした。 次に下顎が前方へ行きにくいのでそれを調整した。 さらに、下の前歯が上の前歯を越える位置まで干渉が無いように調整した。 すると、右の歯の痛みが消え、右肩の凝りが消えた。 しかし、彼女は左肩の凝りを訴えた。 それで側方の干渉を両方調整したら、両肩の凝りは消え、顎は全体に動き易くなり、首も良く回る様になった。
今度は、顎関節を取り巻く靭帯、咀嚼筋群をロルフィングで丁寧にほぐした。 それに顎関節内深く針を入れ、奥深くほぐした。
彼女はすっかり痛みが消え大喜び、口は軽く開くようになり、首も肩も軽くなりビックリしていた。
ここまでは身体のヒーリング。
本題はここから。 西村が言った。 「貴女の咬みあわせ、顎の状態はずーっと前からこの状態なのだ。 今回の症状は、精神的ストレスが引き金になっている。 嫁姑等色んな問題があるものね! 寝ても、あの野郎!子の野郎!あのこと!このこと!と引きずると、夜中に歯ぎしりをし歯が痛くなるんだよ。 明日、宝くじに当たった100万円を銀行に取りに行こう何て考えて寝ていればそんなことはない。」 彼女 「それはありますね!」 西村 「今日、今貴女にした処置は西村の指定した日時に来院し、10万円を支払う処置なのよ! そのため日本中、遠くから来院されるのよ!」 彼女 「そうですね!前回来たとき、新潟の奥の方から5時間かけて来たと言う人に待合室で会いました。」 西村 「そうでしょう! 私は貴女の義理のお父さんもお母さんも良く知っている。 貴女の御主人も良く知っている。 皆さん西村歯科医院で多額の治療費を支払った方々です。 そして、私は今日貴女とは初対面です。 だのに、どうして一時間も時間を割いて治療して貰ったのかしら! 普通はしないよな!それも自分の診療時間を越えてまで!」 彼女 「私は良いところへお嫁に来ました!」 西村 「そうだろう!、色々あるけど、今回の私の親切は貴女のお姑さんへのお返しですよ。」 彼女 「本当にそうですね!感謝しなくっちゃ! 考え方をかえなくっちゃ!」 西村 「そうだよ!そう思えば夜はグッスリ眠れるよ! 歯の痛み、肩凝りも消えるよ。」
彼女が受付で支払いをしょうとしたとき、西村は言った。 「今日の治療は貴女のお姑さん、何より悲壮な顔をして貴女を連れ来た御主人への顔を立ててした西村の親切です。 いきなり10万円等と言えません。 だから、今まで沢山のお金を頂いたお返しです。 お金は頂きません。 その代わり、さっき気がついたことを忘れないでね!」
彼女は何かに気がつき、晴れ晴れとした顔をして、ビル下で車で待つ御主人の元へ降りていった。
先日処置をした先生が言った。 「彼女、定期的に痛みが来るんですよ! 今回は、姑さんに家を立てて貰ったンですよ。 それが隣なんですね! もうちょっと離れていれば、今日の様なことは無かったんですが。」 先生はその辺の事情を知っていた。
今どき、若夫婦に東京で家を建てて貰える幸せなどめったに無い。 ありがたいけど、近すぎるのがちょっとしんどい。 まあ!ぜいたくな悩みなのだ。
今回の西村の親切は、誰のお陰であったかを彼女は知った。 彼女の思いは少し変わった。
肉体的な歯科医学的対処方法。 身体的ヒーリング。 精神的・心理療法によるヒーリング。 この三つを一つにして、西村は『デンタル・ヒーリング』と言っている。
歯科治療をしながら『愛』を語る。 自分への愛、他人への愛、愛の調和。 そのうち、患者様は忘れていたそれぞれの愛を思い出す。 そして、違う人生を歩み始める。 自分が本当に目指したい人生を。 これを『デンタル・ヒーリング』と云う。
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