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頭に浮かぶ稽古風景-4 椎名先生 - 西村雅興 [2020年1月7日(火)]
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頭に浮かぶ稽古風景-4 椎名先生
西村雅興
2020年1月7日(火)
椎名先生との稽古

岡田さんが椎名先生の話をした。
全県連合同稽古で椎名先生の稽古(元立ち)を見た。
八段を見ても感心する程の人はすくない。
その頃八段殺しと一時言われたことがある。
元立ち八段が西村に手玉にとられればそう言うことになる。
武道館へは原田先生との稽古のみが目的だった。
さて、椎名先生の稽古ぶりは素晴らしかった。
舞うがごとくに相手を左右に捌き、ストンと面を打つかと思えば、左右の二つ胴を見事に斬っている。
しかも手打ちで無く、腰を浮き腰で左右に動かして斬っている。
当時、乳井先生のこの胴を見て研究し、西村も得意にしていた。
相手を小馬鹿にしたような技なので控えていた。
あまり生意気な人にはこの胴を打つとギャフンとなっていた。
さて見ての西村の思いは、こんな人が本物の八段だよな!と感心していた。
稽古をしたいとも思わなかった。
ただ見ているだけで満足だった。
あるとき、椎名先生の方から声が掛かり稽古をした。
随分研究はしていたので先生の手の内は判っている。
お互いに良いところが無く攻めあぐねていた。
最後に先生が面を打つと色を出した。
しめたと思い面を差し出した。
面を返して胴のつもりだった。
面を止めるのが一瞬遅れ面を打たれた。
完敗だった。
その後、ずーっと考えている[これが西村なのだ]、寝ても覚めても考えている。
あのとき、先生の色は見えたが間に合わなかった。
普通の相手ならば得意の面返し胴が入っていたはずだ。
今度はもっと得意の、竹刀の裏で面を受け、体を左に捌いて胴を取ろうと思った。
この捌き方は絶対なる自信があるのだ。
半年後くらいに先生と稽古をした。
お互いに入らない。
前回と同じ面を打つと色が見えた。
その時!小手を斬っていた。
先生は「参ったと言われた」
西村としては胴を打つつもりだったのだが、西村の【智】は小手を打っていた。
小手を打った西村自身がキョトンとして戸惑っていた!
後で聞いたところ警視庁の連中が目の敵にしているとか。

椎名先生の剣道には良い師匠がいるのだ。
ちょっと名前は忘れたが○○傳という先生だと聞いた。
名人にはその師に名人がいると言うことだ。
京都大会で見ていたら先に一本取っていた。
終了間際に椎名先生が不用意に面を打ち、小手を取られた。
後で「先生!どうしてあそこで面を打ったのですか?」と聞いた。
彼は笑いながら言った。
「せっかく京都まで来たのだから、面ぐらい一本打っておかないと思って打った」
彼にとっては剣道はこの様な感覚なのだ。
ちなみに先生の胴は手作りだと言っていた。
西村が博多の鞘師に百万円かけて作ってもらった鮫胴をみて、「胴に桜が舞い散っている!」と褒めてくれた。
あまり派手なので、めったに使っていない。
日本中誰も持っていない胴だが、自己顕示欲が強く出過ぎるので控えてしまっている。

合同稽古に行ったら、椎名先生の剣道を是非みてほしい。
私は余り人のことを尊敬しないのだが、彼の人柄と剣道は尊敬している。



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