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原田先生秘蔵映像の解説--5
西村雅興
2015年1月7日(水)
昭和63年 明治村  対 松井貞志先生

両者静かに立ち上がり,一足一刀の間合いで竹刀の先を交える。
お互いは竹刀に捕われず相手の本体、心をしっかり観ている。

 ここから原田先生の面を打つまでの流れを、一般的な剣道家の視点ではなく、覚醒催眠への誘導の流れと見てみましょう。
剣道は結局の所、先を取って相手を動かし、それを読んで打ち取るものです。
相手がシメタ!と思って錯覚を起こして打って来る所を取るか、相手が我慢が出来ず、打つべき所を差し出して来た所を取るか、これを誘導しその流れを読んで、相手が隙を見せた時、智なる本能が反射的に打つのが剣道です。
柳生新陰流の極意はここに有ります。
剣道は一種の神経戦です。

両者、激しく竹刀の先で火花を飛ばしています。
原田先生、竹刀を下げながら少し間を詰めます。
松井先生、原田先生の竹刀を嫌います。
自分も負けじと竹刀を下げます。
松井先生、やや上から押さえにかかります。
原田先生の竹刀は下がった時、少しの間その位置に止まっている事があります。
松井先生、相手の下がった竹刀の先を嫌って、巻き落としにかかります。
原田先生、裏から強い巻き落としを仕掛けます。・・・それも二回も!
その後下げ上げようとして来た竹刀の先を強めにおさえます。
押さえられた相手は思わず、つんのめる様に打に出てしまいます。
この時点で勝負はだいたい決した。
原田先生の術中に嵌まった状態になり、松井先生は原田先生の本体ではなく竹刀と争っている。
原田先生の攻めに松井先生やや担ぎ気味に小手が浮く。
同じ様に小手が二回浮いた。
松井先生、原田先生の下からの攻め、体の前進に負けじと打ってしまう。
その後、原田先生執拗に竹刀を廻しながら攻め上げて行く。
この時竹刀を下げて少し時間を置く、相手からすれば下から攻められて居るのを忘れ、相手の面がやけに近く大きく見えるから、面に打ちたくなる。
打って出て行って両者、離れの一瞬、両者にらみ合い。
松井先生打って出て別れの瞬間、松井先生の気が一瞬緩む。
向かい合い竹刀を合わせるが、まだ気が整っていな。
松井先生が一瞬虚脱状態になる。
原田先生そこに吸い込まれるように実で面に出る。
二本とも相手の虚に、原田先生の実が吸い込まれて面を打った。
観客のつぶやき「二振りや!」

打つ前の序曲が何と長い事か!
打ち合い、分れ、竹刀を合わす、気が充実していない時、原田先生の実が吸い込まれる。



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