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- 上達の秘訣 - 西村雅興 [2012年1月7日(土)]
上達の秘訣2 - 西村雅興 [2012年1月8日(日)]
上達の秘訣3 - 西村雅興 [2012年1月9日(月)]
上達の秘訣4 - 西村雅興 [2012年1月10日(火)]
上達の秘訣5 - 西村雅興 [2012年1月11日(水)]
上達の秘訣6 - 西村雅興 [2012年1月13日(金)]
上達の秘訣7 - 西村雅興 [2012年1月14日(土)]
上達の秘訣8 - 西村雅興 [2012年1月14日(土)]
上達の秘訣9 - 西村雅興 [2012年1月15日(日)]
上達の秘訣10 - 西村雅興 [2012年1月15日(日)]
上達の秘訣11 - 西村雅興 [2012年1月22日(日)]
上達の秘訣12 - 西村雅興 [2012年1月30日(月)]
上達の秘訣9  追加 - 西村雅興 [2012年1月16日(月)]
Re:上達の秘訣9  追加 - 青木大輔 [2012年1月18日(水)]
Re[2]:上達の秘訣9  追加 - 西村雅興 [2012年1月20日(金)]



上達の秘訣3
西村雅興
2012年1月9日(月)
名剣士と言われた榊原先生は左足に七割体重が乗っていると言い切っている。
しかも、左足踵は1センチくらいしか上がっていない。
右足の踵は紙一重すいているくらいだ。

身体が前に進むには重心が前に移動する必要がある。
誰しも思うのは後ろ足で身体を前に押しやる事だと思う。
左足の母指球辺りを支点にし、筋肉が前に押しやるその駆動力となる。
それは間違っていない。
しかし、事実としてはその初動はそうではないのだ。
座った椅子から立ち上がるのを指一本で制御する方法がある。
立とうとする時、相手の額に指を当て、前かがみになるのを止めるだけだ。
それで相手は椅子から立ち上がれない。
椅子に座っていた時から立つには、前屈みになって重心を椅子の前に動かしその時点で重心を上に持ち上げる様にすれば簡単に立ち上がれる。

二足歩行の原理は『人間は前に倒れながら姿勢維持の反射を使って後ろ足を軽く押して前足に体重を乗せる。これの繰り返しで前進歩行をしている。」

重心を両足の真ん中にして歩き始めるには、右足の重みを抜き左足を支点に強く押し出す必要がある。
もし、前足の重みが強ければ、重心を大きく後ろに移動し、左足に重みをかけ、ここを支点に左足の筋肉を駆動力で前進する。
初動が前足、後ろ足と重心のキャッチボールをしてから前進している。
さらに慣性の法則に逆らうから強い筋力が必要だ。

ほとんどの剣道家はこの様に打って出ている。
これは全くの間違いである。
前進の基本は歩く様に身体を前に進める事に有るのだ。

『二足歩行の原理は『人間は前に倒れながら姿勢維持の反射を使って後ろ足を軽く押して前足に体重を乗せる。これの繰り返しで前進歩行をしている。」』

両足をそろえてる所から、歩く最初は膝を少し緩め、身体をやや前傾にして重心を前に滑り落とす事から始まる。
これを『重心の滑落』と云う。
動き始めは膝の弛みと前倒れという筋肉の働きを一切必要としない。筋の脱力(きん肉力のマイナス)から始まっている。
この時の重心の滑落は【重力】を利用しているので筋力は必要がない。
そしてそのとき慣性のとどまる法則は破れ、既に前進の慣性の法則に移行している。

では具体的に剣道的にはどのよう身体を使うかと説明する。

先ず足幅前後幅を狭くし、前足の土踏まずの辺りに後ろ足のつま先が来る様に立つ。
打ちたい心を丹田に納める準備をする。
打気の頭のやや前出を身体の真ん中に持って来る。
次に打気の右肩を引く。
そこで膝を少し緩める。
これで歩行の準備ができた。

しかし、剣道ではもう少し距離を速く前進する必要がある。
伸びた身体を沈めて床を十分掴む必要(蹴りシロ)があある。
左腰に全体重を乗せ、ひかがみが伸びている程度に膝を緩める。
この時後ろ足の踵の高さは床から1センチくらい。
弦を引き弓がしなった状態にする。
この状態で前足のつま先に軽く体重を乗せ、前足の踵とは床から紙一重。
(前進の距離、速さを競うときは足幅の前後幅は適宜調整する)
これは飽くまで竹刀を持っていない事を想定している。
腹の力を軽く抜くと下腹が緩み重心が軽く前に滑り落ちる。
この重心が前足のつま先を超えようとする時、それにつれて右足が床を滑る様に離れる。
重心のベクトルはやや前下方を向いてその方向に進んでいる。
(この時は筋力はマイナスの作用であるので相手には全く察知されない。)
このままでは倒れてしまうので左足の後筋を使いゆっくりと押し出す。
この力はやや上向き前進のベクトルとなる。
このベクトルの合力は体を落とさず重心をあまり下げず、腰を床に平行に前進させる。
この部分がゆっくりで長いと相手が飛び込んで来る。
武術とは【重力の有効活用こそが秘伝】なのだ。

このゆっくりさと長さの達人が原田先生なのだ。
この感じは相手からどのように感じるか。
イソちゃんが言った「原田先生の右胸に空間があり、そこに吸い込まれてしまう。私もあの空間が欲しい!」
原田先生の手元の位置は低い、打気が右肩に無いから右肩が前に出ていない。」
相手からすると、原田先生は前に来ている様な気がするが、良く分からない。【フェードイン】の状態なのだ。
これはマズイと無意識が思い打つ予備動作を起こす。
その瞬間先生の押し足は蹴り足に変わり、この瞬間左手が竹刀を押し出し振りかぶりとなり面を打つ。
先生はこの瞬間まで決して左拳を動かす事は無い。

随分昔、佐藤博信先生の全盛期の時に京都で稽古を頂いた。
先生がスーッとフェードインして面を打った。
細い円柱が急にラッパの様に膨らんで姿が見える状態だ。

この様な動きが出来ると相手に起こりを察知されないのだ。

さて、相手がこちらの起こりを全く察知しないと引き出す事が難しい。
そこで、右膝をスッと緩め、行くぞ!と相手に攻めを送る。
相手は無意識レベルで反撃の用意、守りの用意を(予備動作で行う)する。
相手の反応少しの時はそれを戻し、再度仕掛ける。
この仕掛けは竹刀を下げ小手を攻める、スッと竹刀の先を進め打たんとする、こちらの首筋を少し緩め面を少し前に落とす様にして誘う。
相手にすれば「来る!」と思ったのに来ない。
これが攻めと緩めの妙で、この時の相手の無意識の予備動作を通して相手の心を手の平に乗せて行く。
相手の心を手の平でお手玉をしている様な状態だ。

剣道はこちらの身体の内側は始動している。
この状態の中に四コマ漫画の一コマ遅れで相手が反応するのだ。
相手は自分から面を打って下さいと打たれに来る。
これが【飛んで火に入る夏の虫】状態なのだ。
剣道は自分から打って行くのではなく、相手が打たれる様に仕向け、相手が打たれに来た所を、あなたの弱さはそこですよ!とつぶやきながら教育的打突をするのです。
八段の先生に突きを出しますよと十分に合図をしているのに、喉元開けて面に来た時、心を動かす勝負はその時点で終了となる。
先生はそこが理解されないので、西村はそれを理解されるまで、不本意ながら最後まで突きを出すしか方法が無かった。
ほとんどの教師八段はこのレベルだ。
西村が八段殺しと云われる所以だ。

この西村が体を出し突きに進めると、上から目線で静かに眺め反応しない範士がいる。
これは強い!肚が出来ている。
この時は西村からの攻めは通用しない!
京都大会範士八段の10組くらいの先生だ。
この先生には先生の誘いに、呼び込みに体を捨てきって乗ってあげる。
乗って上げるが、西村の左拳は先生の心が動き先生の左拳が動くまで動かさない!
その一瞬!先生の左拳が動いた瞬間、西村の内なる神、仏、防御機構・・が働き、何かをしている。
この瞬間何をしているかは全く分からない。
身体が勝手にやっているのだ。
これを神妙剣、無想剣とも云う。
この秘訣は只一つ【内なる自分を信じて、捨てきって身を捧げる事だ】
これを柳生流の秘伝【捧身】(身を捧げる)と云う。
この時内なるもう一つの自分に出会える。
いわゆる【インナートリップ)だ。
このレベルの剣道が出来たとき、天下に名だたる先生にも西村は通用するのだ。
(ただし竹刀レベルの剣道をすると全く刃が立たない事を付け加える)

ここまでが重心の移動、重力の活用、その一瞬・・・
への説明でした。

この次は全体の動きの説明に入って行きます。
(尚、同じ様な内容が過去ログに有りますから予備の勉強をしておいて下さい。)
胴体力、身幹の活用、肩甲骨、胸の活用。
二足歩行から手と足の関係。
左脇の締めからの茶巾絞り。



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